【よくある間違い】所得税の累進課税を理解して不安解消

所得税
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所得税の税率が高すぎると感じている方はもしかすると大きな勘違いをしている可能性があります。

累進課税と聞いてきちんと言葉で説明ができない方はこの記事を最後までお読み下さい。

所得税の累進課税をしっかりと理解するには、単純累進課税と超過累進課税の違いを理解することが大切です。

この記事では、所得税の税率に関して以下について説明しています。

  • 所得税とは
  • 所得税の税率
  • 累進課税とは
  • 単純累進課税とは
  • 超過累進課税とは
  • 所得税の速算表の使い方

累進課税を正しく理解すれば、収入が増えて税率が高くなることに対しての不満が少なくなります。

※所得税が生じれば復興特別所得税などが生じますが、この記事では割愛させていただきます。

所得税とは

所得税とは、1月1日~12月31日の個人の所得に一定の税率を乗じることによって計算され、年末調整や確定申告によって納付します。

税金の性質により、所得税は「国税・所得課税・直接税・普通税・申告納税」と分類することができます。

上記の性質を言い換えると、所得税は「国に納める(国税)、儲けに対して課税される(所得課税)、納税者と担税者が同じである(直接税)、集めた税金の使い道が決まっていない(普通税)、納める税金を自分で計算する(申告納税)税金」となります。

所得税の税率

所得税の税率は5%~45%の範囲があり、以下の7段階に区分されています。

  • 5%
  • 10%
  • 20%
  • 23%
  • 33%
  • 40%
  • 45%

所得税には「総合課税」「申告分離課税」「源泉分離課税」の3つの課税方法がありますが、所得が増えるにつれて税率が上がる累進課税が適用されるのは「総合課税」です。

この記事では、累進課税が適用される総合課税についての説明です。

サラリーマンの収入源である給与は総合課税によって計算されるので、日本で働く多くの方に累進課税が適用されているということになります。

累進課税とは

累進課税とは、所得が増えると税負担が重くなるという制度です。

所得税だけでなく贈与税や相続税についても累進課税が適用されています。

累進課税のメリット・デメリットについて紹介していきます。

累進課税のメリット

累進課税のメリットには以下の3点のメリットがあります。

  • 富の格差が広がりにくくなる
  • 納税者の税負担の公平を図ることができる
  • 所得の再分配

累進課税のデメリット

累進課税のデメリットには以下の2点のデメリットがあります。

  • インフレによる問題
  • 頑張った人が不利になる

累進課税のよくある間違い

所得税の累進課税に関するよくある間違いとして「所得が増えて税率が変わると所得全体に高い税率がかかってしまい大幅に所得税の金額が変わってしまう」という単純累進課税と勘違いしているということがあります。

累進課税には単純累進課税と超過累進課税がありますが、所得税には超過累進課税が適用されています。

単純累進課税と超過累進課税の違いを理解して、自分の所得税の計算を知っておきましょう。

単純累進課税とは

単純累進課税とは、課税標準が一定額を超えた場合にその全体に対して高い税率を適用するというものです。

単純累進課税では、所得が増えて税率が上がることによって最終的に手元に残るお金が少なくなることがあります。

超過累進課税とは

超過累進課税とは、課税標準が一定額を超えた場合にその超えた金額に対してのみ、高い税率を適用するというものです。

超過累進課税では、所得が増えて税率が上がったとしても最終的に手元に残るお金が少なくなるということはありません。

単純累進課税と超過累進課税

所得が330万円から340万円に増えた人を例にとって単純累進課税と超過累進課税で計算される場合で説明していきます。

所得税の実際の計算方法は超過累進課税であるので、単純累進課税の計算方法は間違った計算方法です。

単純累進課税の場合

課税される所得金額税率
195万円以下5%
195万円超330万円以下10%
330万円超695万円以下20%
695万円超900万円以下23%
900万円超1800万円以下33%
1800万円超4000万円以下40%
4000万円超45%
所得税の税率表

単純累進課税で計算される場合には、所得が330万円が340万円に増えると所得税の税率が10%から20%に増えることになります。

所得が330万円の場合の所得税
  • 330万円×10%=33万円
所得が340万円に増えた場合の所得税
  • 340万円×20%=68万円

所得税を単純累進課税で計算されるとすると、所得が10万円増えることによって所得税が35万円増えてしまい所得が増えても手元に残るお金が少なくなり損をしますが、これは間違った計算方法です。

超過累進課税の場合

課税される所得金額税率
195万円以下5%
195万円超330万円以下10%
330万円超695万円以下20%
695万円超900万円以下23%
900万円超1800万円以下33%
1800万円超4000万円以下40%
4000万円超45%
所得税の税率表

超過累進課税で計算される場合には、所得が330万円が340万円に増えても所得税の税率がすべて10%から20%に変わることにはなりません。
所得税の税率5%が適用される部分と10%が適用される部分と20%が適用される部分があるということです。

所得が330万円の場合の所得税
  • 195万円×5%=9万7千5百円
  • (330万円-195万円)×10%=13万5千円
    • 所得税は上記の合計金額であるので、23万2千5百円となります。
所得が340万円に増えた場合の所得税
  • 195万円×5%=9万7千5百円
  • (330万円-195万円)×10%=13万5千円
  • (340万円-330万円)×20%=2万円
    • 所得税は上記の合計金額であるので、25万2千5百円となります。

実際の所得税は超過累進課税で計算されるので、所得が10万円増えて税率が変わったとしても、所得税が2万円増えるだけです。

所得が330万円から340万円に増えて税率が10%から20%へ変わったからと言って所得税が大幅に変わるわけではなく、税率が変わることによって手元に残るお金が少なくなることはありません。

所得税の速算表の使い方

所得税の速算表には控除金額という欄があり、この控除金額を使えば超過累進課税の面倒な計算を省略することができます。

課税される所得金額税率控除金額
195万円以下5%0円
195万円超330万円以下10%97,500円
330万円超695万円以下20%427,500円
695万円超900万円以下23%636,000円
900万円超1800万円以下33%1,536,000円
1800万円超4000万円以下40%2,796,000円
4000万円超45%4,796,000円
所得税の速算表

所得が340万円の人の場合、下記の黄色の部分税率と控除金額を使用していきます。所得税の速算表を使って計算する場合は、5%や10%の部分は計算過程では使用しません。

課税される所得金額税率控除金額
195万円以下5%0円
195万円超330万円以下10%97,500円
330万円超695万円以下20%427,500円
695万円超900万円以下23%636,000円
900万円超1800万円以下33%1,536,000円
1800万円超4000万円以下40%2,796,000円
4000万円超45%4,796,000円
所得税の速算表
所得が340万円の場合の所得税
  • 340万円×20%-427,500円=25万2千5百円
所得が340万円の場合の所得税
  • 195万円×5%=9万7千5百円
  • (330万円-195万円)×10%=13万5千円
  • (340万円-330万円)×20%=2万円
    • 所得税は上記の合計金額であるので、25万2千5百円となります。

税率表と速算表のどちらを使って計算しても所得税の金額は変わることはありません。

所得税の累進課税 まとめ

累進課税には単純累進課税と超過累進課税があるのでそれぞれの違いを正しく理解しましょう。

単純累進課税は課税標準が一定額を超えた場合にその全体に対して高い税率を適用するものであり、超過累進課税は課税標準が一定額を超えた場合にその超えた金額に対してのみ、高い税率を適用するものです。

所得税は超過累進課税による計算であるので、所得が増えて税率が変わったとしても全体的に新たな税率が適用されるわけではないので良心的です。

おまけ【過去最高の所得税率】

過去最高の所得税の税率は1974年での75%であり、1974年の住民税の最高税率が18%でした。

驚くべきことに1974年では所得税と住民税を合計すると税率93%となります。

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