自動車保険の保険料を経費にできない勘定科目に変えるというのは、どういうことか分かりますか?
いまいち何を言っているかわかりませんよね。
実は、自動車保険のうち、任意保険で契約期間が2年以上の保険料については、支払い時に一括して経費にすることができないので、一時的に資産に計上する必要があります。
この記事では、自動車保険に関する以下の内容を紹介しています。
- 自動車保険の種類
- 自動車保険(自賠責保険)の勘定科目
- 自動車保険(任意保険)の勘定科目
- 自動車保険の消費税区分
- 自動車保険料は所得控除の対象となるか?
- 個人事業主の場合の注意点
この記事を読めば、自動車保険の経理で迷うことはなくなるでしょう。どうしてもわからない場合には、税理士紹介サイトを利用して税理士に丸投げする方法も検討してみましょう。
自動車保険の勘定科目
自動車保険には大きく分けて以下の2種類があり、保険の種類や保険期間に応じてそれぞれ処理が異なります。
基本的には、自動車保険の保険料を支払った場合に使用する勘定科目は、「損害保険料」と「車両費」の2つです。
自賠責保険
自賠責保険は、自動車を保有している人は必ず入る必要がある保険であり、自賠責保険は強制保険と言われることもあります。
任意保険
任意保険は、自賠責保険とは異なり、必ずしも入る必要がない任意の保険です。
任意の保険ではありますが、自賠責保険では対応することができない部分もあるため任意保険にも加入することを推奨しています。
自動車保険(自賠責保険)の勘定科目とは
自動車保険(自賠責保険)の勘定科目には、契約期間に関係なく「車両費」又は「損害保険料」を使用します。
自賠責保険は、以下の理由から租税回避に利用される可能性が少ないので、車検のタイミングなどで一括して経費にすることができます。
自動車保険(任意保険)の勘定科目とは
自賠責保険(任意保険)は、契約期間が1年か2年以上の場合でそれぞれ処理が異なるので紹介していきます。
任意保険の契約期間が1年
任意保険の契約期間が1年以内の場合には、勘定科目「車両費」又は「損害保険料」を使用します。
期中や年の途中に契約をしている場合には、期末時に勘定科目「前払費用」を使用することもあります。
任意保険の契約期間が2年以上
任意保険の契約期間が2年以上の場合には、勘定科目「車両費」と「損害保険料」だけでなく、期末時に「長期前払費用」を使用します。
自動車保険の消費税区分
自動車保険の消費税区分は、「非課税仕入」となるので注意をしましょう。
会計ソフトを使用している場合で、勘定科目「損害保険料」を使用したときは、自動的に消費税区分が「非課税仕入」となりますが、勘定科目「車両費」を使用したときは、自動的に消費税区分が「課税仕入」となります。
自動車保険の勘定科目として「車両費」を使用する場合には、消費税区分を「課税仕入」から「非課税仕入」に変更することを忘れないようにしましょう。
消費税が非課税となる取引の詳しい内容については、下記の国税庁ホームページをご確認ください。
自動車保険(自賠責保険)の場合の仕訳
自動車保険(自賠責保険)の場合の仕訳を、支払時と期末時で確認していきます。
支払時
自賠責保険料25,000円を支払った場合の仕訳は以下の通りとなります。借方の勘定科目「損害保険料」は「車両費」でも問題ありません。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 消費税区分 |
---|---|---|---|---|
(損害保険料) | 25,000 | (普通預金) | 25,000 | 非課税仕入 |
期末時
自賠責保険料を支払った場合には、期末時に振替処理をする必要はないので、「仕訳なし」となります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 消費税区分 |
---|---|---|---|---|
仕訳なし |
自動車保険(契約期間1年以内の任意保険)の場合の仕訳
自動車保険(契約期間1年以内の任意保険)の場合の仕訳を、支払時と期末時で確認していきます。
支払時
契約期間が1年以内の任意保険30,000円を支払った場合の仕訳は以下の通りとなります。借方の勘定科目「損害保険料」は「車両費」でも問題ありません。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 消費税区分 |
---|---|---|---|---|
(損害保険料) | 30,000 | (普通預金) | 30,000 | 非課税仕入 |
期末時
契約期間が1年以内の任意保険の場合で、期中や年の途中に契約をしているときは、翌期・翌年度の費用の部分を資産に計上する必要があります。
1月~12月が年度であることを前提で、契約期間が8月~翌年7月までの1年間(12ヶ月間)であるとすると、翌年度分の7ヶ月分を費用の勘定科目「損害保険料」から資産の勘定科目「前払費用」に振替える必要があります。
「損害保険料」として費用に計上した分をうち17,500円(30,000円÷12ヶ月×7ヶ月)を「前払費用」に振替えます。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 借方消費税 | 貸方消費税 |
---|---|---|---|---|---|
(前払費用) | 17,500 | (損害保険料) | 17,500 | 対象外 | 非課税仕入 |
「前払費用」に振替えた場合には、翌年度で「前払費用」から「損害保険料」に戻す仕訳が必要です。
自動車保険(契約期間2年以上の任意保険)の場合の仕訳
自動車保険(契約期間2年以上の任意保険)の場合の仕訳を、支払時と期末時で確認していきます。
支払時
契約期間が2年の任意保険60,000円を支払った場合の仕訳は以下の通りとなります。借方の勘定科目「損害保険料」は「車両費」でも問題ありません。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 消費税区分 |
---|---|---|---|---|
(損害保険料) | 60,000 | (普通預金) | 60,000 | 非課税仕入 |
期末時
契約期間が2年以上の任意保険の場合には、翌期・翌年度以降の費用の部分を資産に計上する必要があります。
1月~12月が年度であることを前提で、契約期間が8月~翌々年7月までの2年間(24ヶ月間)であるとすると、翌年分の12ヶ月分と翌々年分の7ヶ月分を費用の勘定科目「損害保険料」から資産の勘定科目「長期前払費用」に振替える必要があります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 借方消費税 | 貸方消費税 |
---|---|---|---|---|---|
(長期前払費用) | 47,500 | (損害保険料) | 47,500 | 対象外 | 非課税仕入 |
「長期前払費用」に振替えた場合には、翌年度以降で対応する月数に応じて「長期前払費用」から「損害保険料」に戻す仕訳が必要です。
今回の例の場合では、翌年度に30,000円(60,000円÷24ヶ月×12ヶ月)を、翌々年に17,500円(60,000円÷24ヶ月×7ヶ月)を「長期前払費用」から「損害保険料」に振替えます。
勘定科目「車両費」に自動車保険以外で計上されるもの
勘定科目「車両費」に計上される代表的なものとして、以下のものがあるので紹介しておきます。
- 車検代
- ガソリン代
- 駐車場代
車検代
車検代の勘定科目には、「車両費(修繕費)」「支払手数料」「租税公課」「損害保険料」を使用するのが一般的です。
消費税区分や注意点が複数あるので、車検代を支払った場合には、以下の記事をご覧ください。
ガソリン代
ガソリン代の勘定科目には、「車両費」「旅費交通費」「燃料費」「消耗品費」「仕入」の5つの選択肢があります。
5つの中から事業形態に合った勘定科目を使用することが経営判断をする上で重要となります。
駐車場代
駐車場代には、コインパーキングの駐車場と月極の駐車場があり、それぞれ処理が異なります。
駐車場代の勘定科目や処理に迷った場合には、以下の記事をご覧ください。
個人事業主の場合の注意点
個人事業主の場合は、自動車保険で経費になるのは、事業で使用した部分となります。
事業とプライベートの両方で自動車を使用している場合には、家事按分をする必要があります。
家事按分の方法としては、以下の2種類があるので、事業形態に合う方法を選択しましょう。
- 走行距離を利用する方法
- 使用頻度を利用する方法
不明点があれば、税理士に確認してみましょう。税理士を探す場合には、税理士紹介サイトを利用するのがおすすめです。
税理士紹介サイトによっては、月10,000円で決算料が0円の格安の税理士を紹介してくれるものもあります。
税理士紹介サイトを探すなら、以下の「プロがおすすめする税理士紹介サイト3選」の記事をご覧ください。
自動車保険は所得控除の対象とならない
平成19年までは、自動車保険の保険料も所得控除の対象となっていましたが、現在、自動車保険の保険料は所得控除の対象とはなっていません。
現在の保険料控除の対象となるものは以下の3種類となっています。
- 社会保険料
- 生命保険料
- 地震保険料
自動車保険の勘定科目 まとめ
自動車保険には大きく分けて以下の2種類があり、保険期間に応じてそれぞれ処理が異なります。
自動車保険(自賠責保険)の勘定科目には、契約期間に関係なく「車両費」又は「損害保険料」を使用します。
任意保険の契約期間が1年以内の場合には、勘定科目「車両費」又は「損害保険料」を使用し、期中や年の途中に契約をしている場合には、期末時に勘定科目「前払費用」を使用することもあります。
任意保険の契約期間が2年以上の場合には、勘定科目「車両費」と「損害保険料」だけでなく、期末時に「長期前払費用」を使用します。
いずれの場合においても、自動車保険の保険料の消費税区分は、「非課税仕入」となるので注意をしましょう。
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